日本の古典芸能3『能 中世芸の開花』

観世流シテ方味方健先生の、役者が読む世阿弥・伝書を読む会も25期を終え、次回からは26期となる。
現在読んでいるのは、『風姿花伝』。

タイトルの本『能 中世芸の開花』は、1970年に平凡社から出版されたシリーズ日本の古典芸能の1冊。
藝能史研究會編で、味方健先生が、「猿楽能の展開」「能の演出」を執筆されている。

次の週末の日曜日、奈良の興福寺で、塔影能が開催される。その演目が能『谷行』だ。
観に行くつもりなので、その予習のため、『谷行』の演出について書かれている本書を読んだ。

読みながら強く感じたのは、健先生の伝書を読む会の講義を聴いているようだということ。
健先生の伝書を読む会に参加しようと思われる方、参加されている方は、ぜひ一読をおすすめいたします。

能『谷行』では、元来観世流では、役行者は登場しないのだけれど、今回の塔影能では、健先生が役行者役となって出演されます。ワクワク。

どうぞ役行者の験力をもって、雨が降りませんように。中止になりませんように。
おん ぎゃくぎゃく えんのうばそく あらん きゃ そわか


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役者の読む世阿弥『風姿花伝』

来週の月曜日から、敬愛する味方健先生の伝書を読む会「役者の読む世阿弥」で『風姿花伝』が始まる。

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味方健先生の伝書を読む会「役者の読む世阿弥」は、2006年11月より始まった。
『風姿花伝』『申楽談儀』『三道』『金島書』『五音』『二曲三体人形図』と続き、再び『風姿花伝』へ戻ろうとしている。
私は『申楽談儀』の終わりから受講させていただいている。

味方先生のお話は、納豆のように糸のように、いろんな所とつながっていって興味が尽きない。
正直、謡を習っていない私には理解できないことや、難しくてわからないことの方が多いけれど、10のうちひとつでも理解できるようになりたいものだ。
また講義の中ですすめられた本を求めるうちに、私の部屋は能の本だらけになりつつある。
先生のすすめる本は、間違いなく面白いので、古書店で探し求めるのも楽しみのうち。

『風姿花伝』のテキストは、2011年に角川ソファア文庫より刊行された竹本幹夫先生の『風姿花伝・三道』。
以前にこのグログでも書いたことがあるが、この本には、最新の研究成果が盛り込まれた詳しい本文解説がついている。
味方先生が、このテキストを使って、どういう切り口で、新たに読みこんでいかれるのか、考えるだけでもワクワクする。

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天女舞の桜

味方健先生の伝書を読む会『二曲三体人形図』が終わり、次回からは『風姿花伝』に入る。

健先生は、『二曲三体人形図』の講義の中で、天女舞図だけがまわりに描かれた花が梅ではなく桜であることを気づかれた法政大学の院生の方の観察眼はすごいと、繰り返しおっしゃられていた。
その方がどういう方なのだろう、何に書いていらっしゃるのかと、ずっと気になっていた。

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灯台下暗し。
『風姿花伝』の予習にと、岩波講座の『能・狂言 II能楽の伝書と狂言』を読んでいたら、その出典が記されていた。ちゃんと勉強しなあかんと反省。

片岡美智「『二曲三体人形図』の天女舞について」(『観世』昭和53年2月)

偶然にも、手元にあり、すぐに上の論考を読むことができた。

その理由こそ、『二曲三体人形図』で学んだことを、一言で要約したようなので、引用。

「〈天女舞〉だけが梅花でなく桜花をあてがわれ、構図も全く違っているという事実は、一体何を物語っているのだろうか。それは、天女・天女舞が大和猿楽の本来の芸ー三体や碎動風・力動風ーとは異質の芸であることの象徴である」

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能と狂言11 能・狂言の絵画資料

描かれた能狂言には、とても興味がある。
発売されたばかりの能楽学会の学会誌『能と狂言』(ペリカン社)は、昨年の能楽学会大会の特集号で、私の興味のまさにストライクゾーン。
中でも巻頭の、謡曲「藤戸」を題材にして描かれたという屏風の話に、興味をひかれた。
香川県立ミュージアム所蔵の二曲一双の「源平合戦図屏風」には、右隻に一の谷合戦、左隻に藤戸合戦が描かれている。その藤戸合戦の方が、謡曲「藤戸」になぞられて展開されているそうだ。   

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能狂言の絵画といえば、先月、三井記念美術館で特別展「河鍋暁斎の能・狂言画」を観た(現在終了)。
狂言を稽古していた暁斎の絵には、狂言が好きでたまらないとうオーラのようなモノを感じ、よく知られる暁斎の別の一面を知ることができた気がする。
どちらかというと、狂言画が多く、狂言に疎い私には、知らない曲がたくさんあって、どんなお話なのか気になる。

「河鍋暁斎の能・狂言画」展は、来月から金沢能楽美術館へ巡回する。
【会期】7月12日(金)~9月22日(日)
【会場】金沢能楽美術館



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金剛巌『初心不可忘』

百万遍に行ったついでに、古本屋さんへ行く。
CBSソニーから出たレコード『狂言 上下』、『狂言85年 茂山千作』、金剛巌『初心不可忘』を購入。

金剛巌『初心不可忘』は、金剛流二十五世宗家金剛巌師が、昭和62年3月から9月、京都新聞の夕刊に25回にわたって掲載されたものをまとめたもの。

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面白くて一気に読んだ。京ことばで簡潔にまとめられた文章は、とても読み易く、何よりも戦前戦後の京都の能楽界を知る貴重な資料だと思う。

京都に住まう能楽ファンには、ぜひともすすめたい1冊。

狂言のレコードは、聴いてから感想を書きます。

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能と狂言総合誌『花もよ』

能と狂言総合誌『花もよ』の第3号が届いた。

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『花もよ』とは、今年の5月に創刊した能狂言の総合雑誌だ。
今年の春に廃刊となった『能楽ジャーナル』の意志を継いだ女性が、編集の代表をつとめ、奮闘しているとのこと。

1冊目は様子見で、能楽堂の書店さんで購入。
おもしろそうな連載もあるし、2号から定期購読を申し込んだ。

高桑いずみさんの連載「 能・狂言 演出の萃点(すいてん)」がお気に入り。
今号のテーマは、能管のお話し。能管を習っている私には、とってもうれしい記事。

各流派の雑誌はあるけれど、やはり能楽ファンにとって、総合的な雑誌は欲しい。
『花もよ』は、まだページ数が少なく、情報も関東が中心は否めないけれど、随所に若い感性にあふれている。
細々でも良いので、長く続けてもらいたいと切に願う。
そのためには、定期購読者を増やしてもらわなければ!

『花もよ』の詳細、定期購読のお申込はこちら→http://www.hanamoyo.info/

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レコード「日本の横笛 ふえの名手たち」

古書店の前を通る時、よほど急いでいない限り、寄らずにはいられません。
先日、百万遍近くの古書店で、面白いレコードを見つけました。
ジャケットに、能管と蒔絵の筒の写真があったので、手に取りました。

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タイトルは、「日本の横笛 ふえの名手たち」。
昭和55年3月4日に、石橋メモリアルホールで開催された同名のコンサートを収録したものです。
森田流笛方田中一次師の一管「九様乱曲」、一噌流笛方藤田大五郎師の「盤渉楽」が入っていたので、迷わず購入しました。

日本の横笛 ふえの名手たち(コジマ録音)

収録曲
九様乱曲 能管:田中一次
神楽囃子 篠笛:若山胤雄 大拍子:貫井美水 大太鼓:丸謙次郎
”綾”能管と篠笛のために 第一篠笛(六本調子):福原百之助 第二篠笛(一本調子)・能管:鯉沼廣行
盤渉楽 能管:藤田大五郎 小鼓:北村治 大鼓:安福春雄 太鼓:金春惣右衛門

ライナーノート 解説:長尾一雄

昨日、大倉流小鼓方北村治師が亡くなられました。
私は、その音色を、映像と音源でしか存じ上げません。
週間朝日百科「人間国宝」芸能能楽4での、「能楽界随一の読書家で知られる」というコメントとともに、書棚の前に立つお姿の写真が、印象に残ります。
舞台を拝見したかったものだと心から思います。
今夜は、先のレコードの盤渉楽をはじめ、能楽囃子体系から、北村治師の音色を追い、ご冥福をお祈りいたします。

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京都観世会館オリジナルグッズ

京都観世会館オリジナルグッズが、売り出されました!

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公演チラシがちょうど入るトートバッグ(1300円)、絵葉書3枚セット(200円)、クリアーファイル(300円)、便箋と封筒のレターセット(600円)の4種類。
京都観世会館のためにと、大人買いしてしまいました。

キャラクターデザインは、京都観世会館能舞台の鏡板。
近代日本画の巨匠・堂本印象作。
堂本印象ならではの、抽象的で斬新な老松。

京都の鏡板といえば、昔の雑誌『金剛』(146〜149・153〜155)に、松野秀世「鏡板 洛中洛外」とい連載があります(松野秀世氏は、能画家松野奏風氏の子息で、日本画家。名古屋能楽堂の老松を描かれた方)。京都の寺社の能舞台、敷舞台を散策する体で、鏡板の由来を紹介され、写生された絵も添えられています。画家ならではの見方が、読んでいて面白かったので、鏡板つながりで紹介しておきます。

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月岡耕漁

能画をコレクションするようになりました。
高いものは買えませんが、なじみの古書店さんが声をかけてくれたり、古書店さんの目録で見つけたり、オークションを利用したりするのが、最近のお楽しみ。
中でも月岡耕漁が、大好きです。

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包み紙に「耕漁肉筆 能画色紙」と前の持ち主が書いていましたが、後述する「The Beauty of Silence」の図録にも、同じ体裁の色紙判が掲載され、「能画」として5枚一組で大黒屋から出版されたものではと推測しています。

月岡耕漁(つきおかこうぎょ)は、、明治から昭和にかけて活躍した能狂言の舞台を専門に描いた能画家です。耕漁は、明治2年3月7日、羽生久亮の二男として生まれました。一時、母の実家の籍に入り、その姓である坂巻をなのりますが、後年、母が浮世絵の月岡芳年と再婚したことで月岡家に入り、芳年没後、母の希望により月岡姓をなのります。
はじめ陶器の絵を伯父宮内林谷に学びます。東京府画学伝習所に入り、結城正明に教えを受けます。ついで月岡芳年・尾形月耕・松岡楓湖に浮世絵を学びました。
明治28年ごろより能画を志し、『能楽図絵』『能楽二百五十番』『能楽百番』を大黒屋より出版しています。昭和2年には、その集大成ともいえる『能画大鑑』を出版しましたが、その年の2月に、59歳で急逝します。

雑誌『謡曲界』昭和2年4月号には、弟子の松野奏風による「耕漁先生と其芸術」と題する追悼文が載せられています。弟子から師への哀悼の文面は、心をうつと同時に、耕漁の足跡を簡明にまとめられていまます。この追悼文には、奏風が描いた「観能中の耕漁先生」が添えられているのもぜひ見ていただきたいです(松野奏風の著作権が切れるのは来年。ここでお見せできないのが残念)。

月岡耕漁の能画は、高価で手元に置くことは難しいですが、手に入りやすい図録2冊に、たっぷりと掲載されていますので紹介しておきます。

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1冊目は、2004年、城西国際大学水田美術館で開催された、「近代の能画家月岡耕漁」展の図録。
西野春雄先生による「月岡耕漁の画業 《能楽図絵》《能楽百番》を中心に」は、耕漁の画業を、詳しく知ることができます。また「月岡耕漁略年譜」は、社会・能楽・美術の動きをあわせて載せられているので、時代の流れの中での耕漁の活動を知ることができます。城西国際大学水田美術館で購入可。城西国際大学水田美術館のサイトは→http://jiu.ac.jp/museum/index.html

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2冊目は、2012年1月〜4月、オランダのマーストリヒトにあるボネファンテン・ミュージアムで開催された、「The Beauty of Silence: Japanese No & Nature Prints by Tsukioka Kogyo 1869-1927」展の図録。版型が大きくて、スキャン失敗。
図録を手にとり、このボリュームで、海外で開催されたことにまず驚きました。そしてうらやましい。当然ながら英語版ですので、まだすべてを読めてはいませんが、解説ページが充実しており、かつ図版が大きくカラーなのがうれしいです。私はアマゾンの洋書で購入しました。
ボネファンテン・ミュージアムのサイトの展覧会のページ→http://www.bonnefanten.nl/en/exhibitions/temporary_exhibitions/the_beauty_of_silence

最後に、紹介しておきたいのは、インターネット上での、月岡耕漁の能画を楽しめるサイト。
まずはピッツバーグ大学による耕漁プロジェクトのサイト。
耕漁プロジェクトのサイト→http://digital.library.pitt.edu/k/kogyo/

文化デジタルライブラリーでも、楽しめます。収蔵資料の能楽資料から楽しみましょう。
文化デジタルライブラリーのサイトの能楽資料のページ→http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/collections/submenu.do?division=collections&class=nougaku_doc

参考文献
城西国際大学水田美術館『近代の能画家月岡耕漁』
ボネファンテン・ミュージアム『The Beauty of Silence』
松野奏風「耕漁先生と其芸術」(『謡曲界』昭和2年4月号)
片山慶次郎「月岡耕漁にたどりつくまで 序に代えて」(『能楽百番』昭和55年 有秀堂 復刻版)
月岡玉瀞「父の思いで」(『能画名作百選 月岡耕漁 松野泰風』国際文化社、昭和58年)

※夫が倒れる前に途中まで書いていた記事。思い入れが深いので、完成させて更新♪

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日本謡曲全集

先日、東京へ行った折、いつも目録を送ってくれる神保町の古書店へ立ち寄る。
さんざん長居して、コーヒーをよばれながら、店主さまにいろいろと教えてもらう。
もちろん本もたくさん買って、宅配してもらう。

なかでも店主さま一押しのレコードは、最近、手に入れたなかで、1番のヒットかもしれない。
日本コロンビアが企画した『日本謡曲全集』という3枚組のレコードだ。

宝生九郎、観世清廉、梅若万三郎など、明治・大正の名人たちの謡を聴くことができる。
能楽囃子大好きなワタシにとって、一噌又六郎、藤田多賀蔵、杉山立枝といった前の世代の一噌流の笛をはじめ、川崎九淵や、幸祥光の音に触れることができるのは、非常に嬉しい。

収録曲等は、いずれ花にいとふ風に、メモしておきたい。
こういうレコードを、CDに復刻して欲しいものだ。

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