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西浦田楽 2

月の出は、午後9時過ぎごろ。山の端が明るくなって月がのぼりはじめる。

庭あがり。石段を松明を持った能衆たちが上がって来る。
西浦田楽の始まりだ。
2013022717

西浦田楽は、地能33番、はね能12番(うち1番閏舞は、閏年のみ)、しづめ4番で構成されている。

【地能】
庭ならし 御子舞 地固め もどき 剱(つるぎ) もどき 高足 もどき 猿の舞 ほた引き 舟渡し 鶴の舞 出体童子(でたいどうじ) 麦つき 田うち 水な口 種まき よなぞう 鳥追い 殿舞 早乙女 山家早乙女 〈くらいれ〉 種おり 桑とり 糸引 餅つき 君の舞 田楽舞 仏の舞 治部の手 のた様 翁 三番叟

【はね能】
高砂 しんたい 梅花 観音の御法楽 鞍馬天狗 猩々 山姥 さお姫 屋島 野々宮 弁慶 閏舞

【しづめ】
獅子舞 しづめ 火の王 水の王 


能衆の中に子供が二人加わっている。「たよがみ」とよばれる役。大人につきそわれ、五方を扇を上下して清める。
2013022719

西浦田楽を世に知らしめた折口信夫は、『翁の発生』の中で、次のように書いている。少し長くなるが、全文を引用(青空文庫さんより)

西浦田楽のとりわけ暗示に富んだ点は、他の地方の田楽・花祭り・神楽などよりも、もつともどきの豊富な点でありました。外々のは、もどきと言ふ名をすら忘れて、幾つかの重なりを行うてゐますが、こゝのは、勿論さうしたものもありますが、其上に、重要なものには、番毎にもどきの手といふのが、くり返されてゐることです。さうして更に、注意すべき事は、手とあることです。舞ひぶり――もつと適切に申しますと、踏みしづめのふりなのです――を主とするものなることが、察せられます。
大抵、まじめな一番がすむと、装束や持ち物も、稍、壊れた風で出て来て、前の舞を極めて早間にくり返し、世話式とでも謂つた風に舞ひ和らげ、おどけぶりを変へて、勿論、時間も早くきりあげて、引き込むのです。
此で考へると、もどき方は大体、通訳風の役まはりにあるものと見てよさゝうです。其中から分化して、詞章の通俗的飜訳をするものに、猿楽旧来の用語を転用する様になつて行つたのではありますまいか。して見れば、言ひ立てを主とする翁のもどきなる三番叟を、猿楽といふのも、理由のあつた事です。

西浦田楽を見学してまず驚いたのは、一つ一つの曲に必ずもどきが続くことだ。
たとえば「地固め」が終わると、「もどき」といって、短い槍を持って現れた能衆が、滑稽なしぐさで笑わせながら、同じ動作を繰り返す。「剣」「高足」も同様に「もどきの手」とセットで続く。

「地固め」 紅白のたすきをかけて、長い槍を持って舞い、槍先で地をつく。
201303071

「地固めのもどき」 注連縄のたすきをかけて、短い槍を持つ。
201303072

「高足」 まさに中世の田楽を思わせる。
201302278

※西浦田楽に関する参考文献等は、最後にまとめて紹介します。

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