能画をコレクションするようになりました。
高いものは買えませんが、なじみの古書店さんが声をかけてくれたり、古書店さんの目録で見つけたり、オークションを利用したりするのが、最近のお楽しみ。
中でも月岡耕漁が、大好きです。
包み紙に「耕漁肉筆 能画色紙」と前の持ち主が書いていましたが、後述する「The Beauty of Silence」の図録にも、同じ体裁の色紙判が掲載され、「能画」として5枚一組で大黒屋から出版されたものではと推測しています。
月岡耕漁(つきおかこうぎょ)は、、明治から昭和にかけて活躍した能狂言の舞台を専門に描いた能画家です。耕漁は、明治2年3月7日、羽生久亮の二男として生まれました。一時、母の実家の籍に入り、その姓である坂巻をなのりますが、後年、母が浮世絵の月岡芳年と再婚したことで月岡家に入り、芳年没後、母の希望により月岡姓をなのります。
はじめ陶器の絵を伯父宮内林谷に学びます。東京府画学伝習所に入り、結城正明に教えを受けます。ついで月岡芳年・尾形月耕・松岡楓湖に浮世絵を学びました。
明治28年ごろより能画を志し、『能楽図絵』『能楽二百五十番』『能楽百番』を大黒屋より出版しています。昭和2年には、その集大成ともいえる『能画大鑑』を出版しましたが、その年の2月に、59歳で急逝します。
雑誌『謡曲界』昭和2年4月号には、弟子の松野奏風による「耕漁先生と其芸術」と題する追悼文が載せられています。弟子から師への哀悼の文面は、心をうつと同時に、耕漁の足跡を簡明にまとめられていまます。この追悼文には、奏風が描いた「観能中の耕漁先生」が添えられているのもぜひ見ていただきたいです(松野奏風の著作権が切れるのは来年。ここでお見せできないのが残念)。
月岡耕漁の能画は、高価で手元に置くことは難しいですが、手に入りやすい図録2冊に、たっぷりと掲載されていますので紹介しておきます。
1冊目は、2004年、城西国際大学水田美術館で開催された、「近代の能画家月岡耕漁」展の図録。
西野春雄先生による「月岡耕漁の画業 《能楽図絵》《能楽百番》を中心に」は、耕漁の画業を、詳しく知ることができます。また「月岡耕漁略年譜」は、社会・能楽・美術の動きをあわせて載せられているので、時代の流れの中での耕漁の活動を知ることができます。城西国際大学水田美術館で購入可。城西国際大学水田美術館のサイトは→http://jiu.ac.jp/museum/index.html
2冊目は、2012年1月〜4月、オランダのマーストリヒトにあるボネファンテン・ミュージアムで開催された、「The Beauty of Silence: Japanese No & Nature Prints by Tsukioka Kogyo 1869-1927」展の図録。版型が大きくて、スキャン失敗。
図録を手にとり、このボリュームで、海外で開催されたことにまず驚きました。そしてうらやましい。当然ながら英語版ですので、まだすべてを読めてはいませんが、解説ページが充実しており、かつ図版が大きくカラーなのがうれしいです。私はアマゾンの洋書で購入しました。
ボネファンテン・ミュージアムのサイトの展覧会のページ→http://www.bonnefanten.nl/en/exhibitions/temporary_exhibitions/the_beauty_of_silence
最後に、紹介しておきたいのは、インターネット上での、月岡耕漁の能画を楽しめるサイト。
まずはピッツバーグ大学による耕漁プロジェクトのサイト。
耕漁プロジェクトのサイト→http://digital.library.pitt.edu/k/kogyo/
文化デジタルライブラリーでも、楽しめます。収蔵資料の能楽資料から楽しみましょう。
文化デジタルライブラリーのサイトの能楽資料のページ→http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/collections/submenu.do?division=collections&class=nougaku_doc
参考文献
城西国際大学水田美術館『近代の能画家月岡耕漁』
ボネファンテン・ミュージアム『The Beauty of Silence』
松野奏風「耕漁先生と其芸術」(『謡曲界』昭和2年4月号)
片山慶次郎「月岡耕漁にたどりつくまで 序に代えて」(『能楽百番』昭和55年 有秀堂 復刻版)
月岡玉瀞「父の思いで」(『能画名作百選 月岡耕漁 松野泰風』国際文化社、昭和58年)
※夫が倒れる前に途中まで書いていた記事。思い入れが深いので、完成させて更新♪
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