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新作能のガリ版刷り謡本

京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センターの連続講座「謡を朗読する〜能をたのしく鑑賞するための準備 前期」を、一昨年、昨年に引き続き受講している。
前期はすでに始まっているが、後期は10月から。興味のある方はこちら。楽しいですよ〜♪

先日、 その講座の後、藤田隆則先生に貴重な数冊の謡本を見せていただいた。
戦前戦後に京都の伏見で制作された新作能の謡本。
藤田先生が、古書店から一括購入した謡本の中に入っていたのだそうだ。

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作者は、竹中実氏(1902〜1975)。竹中実氏は、京都市伏見に住んだ篤志家で、家業の薬剤師のかたわら、謡曲愛好者の集まりである伏見友楽会の中心となり、戦前戦後を通じ完曲26番、謡物20曲を作曲し、ガリ版・木版刷で残している(田中允『未刊謡曲集』続1 「明石」解題 1987)。
謡本の中に、その新作能を作ったきっかけなどを紹介する新聞記事、披露する発表会のチラシなどもはさまれており、見せていただいていて興奮する。写真の手前の「原爆」と題された曲は、諸国行脚の僧が広島で原爆犠牲者の川施餓鬼をする舟人にあい、ともに読経するうち、犠牲者の霊が現れて世界平和の悲願を訴えるというお話。
これらの新作能は、古典文庫の未刊謡曲集の中にすべて所収されている。

新作能とは、古典として継承されきた南北朝から室町末期までに作られた演目に対し、江戸時代から明治以降に作られた近現代の作品をいう。しかし、狭義には、明治以降の近代の作品を指す(西野春雄「新作能の百年(2)」『能楽研究』30号、2006)。

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